【最新モデル試乗】フラッグシップとしての進化と熟成【Tipo Car Quest】

マツダのラージ商品群は、成り立ちからしてユニークな存在だ。 なによりも縦置きエンジンと後輪駆動をベースとするプラットフォームに直6エンジンを搭載するという、いまやプレミアムブランド以外ではお目にかかれない、贅沢にも思える基本構成を備える。

【最新モデル試乗】フラッグシップとしての進化と熟成【Tipo Car Quest】
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マツダのラージ商品群は、成り立ちからしてユニークな存在だ。
なによりも縦置きエンジンと後輪駆動をベースとするプラットフォームに直6エンジンを搭載するという、いまやプレミアムブランド以外ではお目にかかれない、贅沢にも思える基本構成を備える。

日本ではその第一弾として2022年にCX-60が発売されたが、いい意味も、悪い意味でも注目を集めた。悪い意味というのは、乗り心地の悪さに集約されていたようだが、さらに操縦安定性における低い限界性能と、燃費性能と走りを両立させるべく開発された3・3リッターという大排気量の直6ディーゼルエンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムを与え、トルコンレスの8速ATを組み合わせた走りが、雑なシフトショックや、走行中にエンジン停止、始動を繰り返す際の微小ながら不快な前後Gの変化をもたらすなどスムーズに走る感に欠き、加えて低回転域から響くエンジン音など課題は山積だった。

さらに欧州ではハンドリングにおける緊急回避性能に関し安全性
面からも叩かれてしまっていた。CX-80は、このCX-60をベースにホイールベースを伸ばして3列シートを与えたもので、同時にCX-8の後継車ともなる。マツダの本来の計画では、もっと早い時期での発売を予定していたが、CX-60で浮き彫りとなった課題を徹底的に見直すという開発体制により、大幅に遅れることになったというのが実際のところだ。

デザイン上でのCX-60との大きな違いは、Cピラー付近の形状が大きく異なっているこ と。60はスポーティに、80はラグジュアリーに見えるような処理がなされている。

今回、基本同じプラットフォーム、同じパワートレインを採用するCX-80に乗るのは、大丈夫かなと不安が先行したのも事実。

と、ここまでマツダファンには辛い文言が並んだかと思うが、結論から先に言ってしまうと、すでに出来上がっていたハードウェアを、一部は部品単位から換え、その上で制御の徹底した見直しを行ったことにより、とくにマイル
ドハイブリッド仕様のドライバビリティは大きく改善されていた。

変速制御はCX-60に比べて遥かにスムーズになり、走行中のエンジンの停止、始動の際のトルク変動も抑えられるなど、ようやく直6ディーゼルの持つ滑らかさ、心地良い吹き上がり感や伸び感を感じられるようになった。ただサウンド関しては、室内では低回転から重いディーゼル音が響くのは変わらずで、遮音にはよりコストを注ぐ英断が必要と感じさせた。

3.3リッター直6ディーゼ ル+48V MHEVは、力強い走りだけではなく、 驚くほどの低燃費を実現。 2.5リッター直4PHEVも設定する。

そして乗り心地は、CX-60で課題だった強い突き上げとさらに上下動の減衰性の悪さは大幅に和らいだ。もっとも、ホイールベースが3120㎜にも達していることからすれば、もう少しフラットな感覚があってもいいとは思う。

ホイールサイズは18と20インチの2種類。 ディメンションの違いもあるが、乗り心地に関してはCX-60より良くなっていた。

鬼門だったハンドリングは、さすがに公道での試乗では、突発的な状況に見舞われでもしない限りは、限界域を知り得る機会はないので語れないが、ただ、CX-60同様のスローに過ぎるステアリングレシオは、日常でゆったりとした動きをもたらす一方で、曲がらない感覚や時に忙しい思いをさせることもあり、ここは今後の検討項目として残っていると思えた。

ちなみに、室内レイアウトや2列目、3列目シートのスペースに関しては、後輪駆動ベース、さらにバッテリーを床下に搭載するPHEVをシリーズに持つものとして秀逸なパッケージングで、3列目でも普通の姿勢で着座してとくに窮屈な思いはしないで済む。

室内はデコラティブにならず、品の良い上質感を演出。 テイストは大きく分けてモダンとスポーツの2タイプで表現する。
2列目はセパレートのキャプテンシートとコンソール付き3人掛け、ベンチシートの3タイプを用意。
3列目も大人が快適に乗れる空間を確保するための工夫が施される。

マツダらしい華やかさを抑えた中に上級車らしい品のある佇まいのインテリアとともに、各席が心地良い空間を得られている。このCX-80の走りからは、近く改良モデルが投入されるCX-60の変化も想像できるところで、それこそここからが勝負。少しでもほっとさせてもらえたのが嬉しい。

【SPECIFICATION】CX-80 XD-HYBRID Premium Modern
全長×全幅×全高 : 4990×1890×1710mm
ホイールベース : 3120mm
トレッド(F/R) : 1640/1645mm
車両重量 : 2120kg
エンジン : 直列6気筒DOHC直噴ターボ
総排気量 : 3283cc
最高出力 : 254ps/3750r.p.m.
最大トルク : 56.1kg-m/1500〜2400r.p.m.
モーター最高出力 : 16.3ps/900r.p.m.
モーター最大トルク : 15.6kg-m/200r.p.m.
トランスミッション : 8速A/T
サスペンション(F/R) : ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(F/R) : ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ(F&R) : 235/50R20
車両価格 : 632万5000円

Text:斎藤慎輔 Photo:佐藤亮太
Special Thanks : マツダ Tel_0120-386-919

URL  https://www.mazda.co.jp

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【試乗インプレッション】改めてロータスの進化が感じられるエミーラの味わい深さ【ティーポ編集部310】
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【試乗インプレッション】改めてロータスの進化が感じられるエミーラの味わい深さ【ティーポ編集部310】

LOTUS EMIRA Type131ことロータス・エミーラは、エリーゼ/エキシージ/エヴォーラの流れを汲む後継モデルとして、アルミ押出材によるバスタブシャシーを採用し、2021年にワールドプレミアされた。日本導入は2023年からとなる。 パワートレーンは、トヨタ製3.5リッターV6スーパーチャージャーと、AMG製2リッター直4ターボの2種類を設定。前者には6速マニュアルとトルコンAT、後者には8速DCTのみの組み合わせとなる。そしてこのエミーラは、ロータス70余年の歴史において「最後の内燃機関モデル」として登場したことでも注目を集めた。 現在ロータスは、スポーツモデルをイギリスで、それ以外のSUVやセダンといったライフスタイルモデルを中国で生産している。ジーリーグループ傘下となって以降、2019年には創立80周年へ向けた中長期計画「VISION80」を発表。その象徴としてハイパースポーツEVのエヴァイヤを送り出し、EVフルラインナップ構想を掲げた。しかし近年は世界的なEV需要の伸び悩みもあり、計画の見直しが進められているのが実情だ。 そうした背景もあり、日本市場でもここ数年

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昨年9月に日本に導入されたフィアット600e(セイチェント・イー)。日本での発表会には、フィアット・ブランドのチーフデザイナーであるフランソワ・ルボワンヌ氏が来日した。彼が語ったのは「BIG SMILE」というデザインコンセプト。まるでキャラクターの顔を描くようにフロントフェイスを造形し、街で出会った瞬間に思わず笑顔になれる存在を目指したという。確かに、ヘッドライトやグリルの造形には柔らかさと親しみやすさがあり、愛嬌を感じさせる。ボディ全体に対するボンネットの比率やリアハッチの傾斜は、初代セイチェントのDNAをしっかりと受け継いでおり、フィアットが長年培ってきた「誰もが笑顔になる愛嬌あるデザインと、優れた実用性の両立」という哲学が反映されているように思う。 フィアットといえば500(チンクエチェント)やパンダといった小型車でよく知られるが、600(セイチェント)は500とコンパクトSUVの500Xとの間に位置するモデル。クロスオーバーが主流となる今の市場にあっても、フィアットはあくまで「日常を楽しく彩る道具」としてのキャラクターを忘れていない。流行のクロスオーバーとは一線を画す、親