[ナカジ~のティーポ的コラム10] 27年前を思い出した今年のル・マン
トヨタが4年ぶりに優勝した今年のル・マン24時間レース。自分も実況を担当したこのレース、27年前、1999年のル・マンを思わせる展開になりました。

今年のル・マン24時間レースは、トヨタ・レーシングのTR010ハイブリッド 7号車が優勝し、BMW MチームWRTのMハイブリッドV8が10.9秒差の2位でした。トヨタの優勝は2022年以来4年ぶり6回目ですが、過去の5勝はいずれも強力なライバルがいない中でのものだっただけに、ある意味初めてライバル勢と真正面から戦っての勝利だったと言えます。

もちろんフェラーリが3連覇していてBoPを厳しくされたとか、ポルシェがWECから完全撤退して出場しなかったとか、いろいろトヨタに有利な条件はあったでしょうが、戦い方を見る限り、決して簡単に勝てたレースでないのは明らかで、見事な戦いぶりだったと思います。


1999年のル・マンで勝利を争った、トヨタGT-ONE 3号車とBMW V12 LMR 15号車。
このレースの深夜から未明(現地時間)にかけて、由良拓也さんたちと実況を担当していたのですが、実況しながら自分の頭には、1999年のレースのことが思い浮かんでいました。自分が現地取材に行った最後のレースで、今も鮮明に覚えていますが、トヨタTS020(GT-ONE)がBMW V12 LMRと激しく優勝を争い、最後は3台中唯一生き残ったトヨタの日本人トリオ組が激しくトップのBMWを追い上げる展開になりました。最終的に、トヨタは片山右京さんがユノディエールを300km/h以上で走っている時に後輪がバーストして後退し、BMWが優勝を飾りました。当時サルト・サーキットのプレスルームで日本人プレスの人たちと右京さんの激走を見ていたのですが、タイヤがバーストした時、「うわー!」という悲鳴のような声が響き渡ったものでした。
あれから27年を経て、再びトヨタとBMWが優勝を争うことになったわけで、まさか終盤に同じようなことが起きないかと心配になっていました。ただ今回ばかりは、長くル・マンとWECを支えてきたトヨタに、サルト・サーキットの勝利の女神は味方してくれたようです。



ティーポ1999年7月号増刊スポルティング・ティーポより。この年トヨタ、BMWの他に、メルセデス、アウディ、日産、パノスなどがワークス体制で激突した。
実は1999年のル・マンは、ティーポ本誌でももちろんレポートしたのですが、もう一冊ティーポ増刊「スポルティング・ティーポ」創刊号で、より詳しいレポートを掲載していました。世界の興味深いモータースポーツと、参加型モータースポーツに特化した内容の雑誌で、創刊号の特集タイトルは「ル・マン乱立政権24時」。各ワークスのマシンをそれぞれ詳しく紹介し、由良拓也さんの一言コメントまでついていました。この時代、BoPはなく、各メーカーは独自の発想でマシンを開発しており、それぞれに強い個性があったように思います。それだけに、こうした本を作ることで、読者の方にル・マンをより楽しんでもらうのは、雑誌編集者冥利に尽きることでした。良い時代だったと言えばそれまでですが、あの当時の方が、多角的にル・マンを楽しめたような気がしてなりません。
Text:中島秀之 Photo:TOYOTA Racing Newsroom、BMW PressClub Global