【趣味の中古車ガイド】フィアット/ベルトーネ X1/9が欲しい!!【Purchase Project 11】

中古車として人気の高いモデルの概要、ヒストリー、バリエーション、トラブルシューティング、インプレッションなどを紹介するティーポの人気連載【Purchase Project】から、大衆車のパワートレインを使って誕生し、長く愛された軽量ミッドシップ車、フィアット/ベルトーネ X1/9の詳細に迫ります。

【趣味の中古車ガイド】フィアット/ベルトーネ X1/9が欲しい!!【Purchase Project 11】
1970年代のスーパーカーを彷彿させるシャープなボディデザインを、4メートル未満の全長で実現。他メーカーの同様の車種にも大きな影響を与えた。

【SUMMARY】
 フィアットX1/9は、1972年11月に発表された。ダンテ・ジアコーサが考案した、横置きエンジン&ミッションのFF車として、1969年に発表されたフィアット128のパワートレーンを、そのままミッドに搭載した軽量スポーツカーだった。
 サスペンションは前後ストラットを採用。またボディデザインはベルトーネのチーフ、マルチェロ・ガンディーニが担当。日本では1974年からロイヤル・モータースにより輸入が始められた。当初直4SOHC1290cc/66psの排ガス対策仕様を販売。1977年からは東邦モータースが輸入・販売を引き継ぎ、エンジン出力は61PSになった。1979年から66psの1498ccエンジン搭載車の販売を開始。近鉄モータースでも扱われた。
 1982年に、生産がベルトーネに移管され、車名もベルトーネX1/9に改められた。このベルトーネ・バージョンは1983年から、BICSが輸入・販売を担当。三元触媒で排ガス規制をクリアし、本国と同様の85psエンジンを搭載し、装備も豪華になっていた。1986年からオートリ―ゼンがインジェクション付75ps仕様の輸入を開始し、1989年まで販売(前年生産終了)された。

【EXTERIOR & ENGINE】‘70sスーパーカー風ボディの軽量スポーツ

ヘッドライトはリトラクタブル式。ウインカー&スモールがバンパー部に備わる。
テールランプは外がウインカー、中がスモール&ブレーキ、内がバック。
ホイールはこの時代定番のクロモドラ製クロス・パターンで、5 1/2J×13。タイヤはヨコハマ・ブルーアースの165/70R13を前後ともに履いていた。

日本仕様X1/9で唯一本国仕様と同じ85psを発揮したベルトーネX1/9の1.5リッター直4SOHCエンジン。現車は熱対策やホース類の交換などが施され、サスペンションも改良が施されている。

【INTERIOR & LUGGAGE】車内、荷室ともに意外なほど余裕がある

インパネも直線基調のデザインで、割れもなく良い状態。現車はステアリングはアバルトの3本スポーク、シフトノブは純正の角ばったものを球型に換えている。
メーターはVEGLIA製。回転計は針が反時計回りに動く。左のコンビメーターは水温と油圧を表示。
センターコンソール上部右側に、左右のパワーウインドーのスイッチが並ぶ。
ベルトーネX1/9では25万円のオプションだった、クーラーが装着されている。真夏の都内でも冷えていたのは驚き。
ヘッドレスト一体型のシートは着座位置が低く、座り心地がいい。スペース的にも意外なほど余裕があり、身長が高くても問題なく運転できるはず。
リアのトランクは二人分の小旅行用荷物を積める十分な容量を持つ。現車はカーペットなどが剥がされている。
フロントにもかなりの容量のラゲッジスペースがある。現車は非常に美しい状態に維持されている。

【IMPRESSION】軽快に走れて街中でもクーラーが効くのに驚き!
 今回お借りしたのは、BICSが輸入したディーラーものの1988年式ベルトーネX1/9。ただし写真からもおわかりのように、大幅にモディファイが加えられている。前後バンパーは初期型の小さなものになり、エンジンシュノーケル、4本出しマフラー、クロモドラホイールなどが装着されている他、サスペンションにも手が加えられているようだ。
 試乗当日は35℃近い気温だったため、かなり不安があったのだが、全く問題なく走行できた。いや、それどころか、新車当時に日本で装着されたと思われるクーラーを入れた状態で、都内の渋滞を走っても、パーコレーションを起こしたり、水温計の針が振りきれるようなこともなく、普通に運転できたのには驚かされた。
 キャブレター仕様の1.5リッター・エンジンは、パワー感はあまりないがそこそこトルクフルで、5速ミッションとの相性がよく、気持ちよく加速できる。ハンドリングは凄く素直な印象で、ノーズが軽快に向きを変えるため、交差点を曲がるだけでも気持ちよく思えるほどだ。
 車体が小さく、車高も低い、さらに着座位置も低いため、現代の路上にいると、大きなSUVやトラックから見えているのか不安になることもあったが、軽量スポーツカーならではの操縦感覚は絶妙で、運転しながら楽しくて仕方なかった。

【TROUBLE SHOOTING】燃料漏れと熱の対策が最重要
 X1/9は新車当時からトラブルが多いと言われるクルマだった。とりわけ冷却系と電気系が弱く、ボディも錆が発生しやすかった。
 生産終了から35年が経った現在、さすがに生き残っている個体は各部に手が加えられていて、トラブル発生率は逆に低くなっているようだ。とはいえ現代のクルマと同様に乗りっぱなしにできるわけではない。油脂類や消耗品の交換は早めに行い、日常的な点検も欠かさぬようにしたい。
 特に、エンジンルーム内のホース類の劣化による燃料漏れには注意が必要だ。また対策を施していても、水温の上昇には常に目を光らせている必要があるだろう。

【CAR'S DATA:取材車両詳細】
BERTONE X1/9 (1986年式/BICS扱い日本仕様)

全長×全幅×全高:3969×1570×1180mm/ホイールベース:2200mm/車両重量:920kg/エンジン:直4SOHC/総排気量:1498cc/最高出力:85ps/6000rpm/最大トルク:12.0kg-m/3200rpm/トランスミッション:5速M/T/サスペンション(F&R):ストラット/ブレーキ(F&R):ディスク/タイヤ(F&R):165/70R13/取材協力:コレツィオーネ http://www.collezione.co.jp/

【CHRONOLOGY】フィアット/ベルトーネX1/9  国内販売の変遷
1972年11月:フィアットX1/9を発表。本国仕様は直4SOHC 1290cc 75ps/6000r.p.m.、9.9kg-m/3400r.p.m.。4速M/T、車重880kg。
1973年10月:東京モーターショーに展示。
1974年6月:ロイヤル・モータースにより輸入・販売を開始。日本仕様は北米仕様をベースにした、昭和48年排出ガス規制対策仕様で66ps。オーバーライダー付の小さなバンパーを装備。
*フィアットX1/9 1290cc 66ps/6000r.p.m. 9.1 kg-m/3600r.p.m. 4速M/T 890kg 左ハンドル
1976年秋:北米のFMVSS(連邦保安基準)に適合する、上下梯子型の5マイルバンパーを装備し、メーターのデザインなどを変更。性能などに変更はない。   
1977年4月:東邦モータースが輸入・販売を引き継ぐ。昭和51年排出ガス規制対策に対応したモデルを販売。61psに出力が低下、車重は45kg増。上下梯子型の5マイルバンパーの両端にサイド部に達する「耳」が備わる。シートはハイバックタイプに変更。
*フィアットX1/9 1290cc 61ps/6000r.p.m. 9.2kg-m/3600r.p.m. 4速M/T 935kg 左ハンドル
1978年10月:本国で1500cc仕様が発表される。本国仕様は直4SOHC 1498cc 85ps/6000r.p.m.、12.0kg-m/3200r.p.m.でミッションは5速M/Tになる。車重920kg。
1979年秋:1.5リッター・エンジン+5速M/Tモデルが日本に導入される。北米仕様ベースで、バンパーはフロントスポイラー一体型の大型のものになり、エンジンフードの幅と厚みが増した。シートバックサイドに布が張られた。タイヤサイズが145から165に拡幅。昭和51年排出ガス規制対策仕様で、1498cc/66ps、980kg。左ハンドル。1500にはデラックス仕様も用意。クロモドラ・ホイール、オーディオなどが装備された。近鉄モータースでも販売。なお1.3リッター+4速M/T仕様も1980年まで併売。
*フィアットX1/9 1500 1498cc 66ps/5250r.p.m. 10.5kg-m/3000r.p.m. 5速M/T 980kg 左ハンドル
1982年3月:フィアットX1/9の生産をベルトーネに移管し、ベルトーネX1/9として販売することをジュネーブショーで発表。
1982年秋:ボッシュLジェトロニック(電子燃料噴射)を装備した1500FIが東邦モータースにより輸入される。
*フィアットX1/9 1500FI 1498cc 75ps/5250r.p.m. 11.0g-m/3000r.p.m. 5速M/T 1010kg 左ハンドル
1983年秋:ベルトーネX1/9が、BICS(BICS三晴)により輸入・販売される。イタリア本国仕様に三元触媒を追加して排気ガス規制をクリア。キャブレター仕様。左ハンドル。パワーウインドー、本革シート、リモコンミラーなどを装備。ツートンカラー。クーラーも用意。左ハンドル。1985年まで販売。
*ベルトーネX1/9 1498cc 85ps/6000r.p.m. 12.0g-m/3200r.p.m. 5速M/T 920kg 左ハンドル
1986年:オートリ―ゼンが、ボッシュ・Lジェトロニック装着で75psエンジンの北米仕様モデルの輸入・販売を開始。サイドプロテクター、リアスポイラー等がつき、エンジンフードがボディと同色となり、サイドプロテクターやクロームパーツはブラックアウトされた。1988年に生産を終了し、日本では1989年頃まで販売。
*ベルトーネX1/9  1498cc 75ps/5250r.p.m. 11.0g-m/3000r.p.m. 5速M/T 1010kg 左ハンドル

北米の基準に合致した梯子型の5マイルバンパーが、日本では1976年から採用された。急いで作られたのか、「付け焼刃」感が強い。
翌1977年から、梯子型バンパーの両端に樹脂製の「耳」が装着された。バンパー両端の先端部分が尖っていて危ないと判断されたようだ。
1979年に日本で発売された1.5リッターモデルは、フロントにスポイラー一体型の大型バンパーを装備。エンジンフード形状も変更。
ベルトーネX1/9は、パワーウインドーやオーディオなどを標準装備。ツートンカラーやクーラーも用意され、豪華な仕立てとなった。

【TOPICS 01】横置きエンジンのフィアットX1シリーズ

ジアコーサ式FF車は、フィアットでは128が最初のモデルで、新たな開発コードとしてX1/1が与えられた。これに続くX1/2がアウトビアンキA112、X1/3はFRのフィアット130、X1/4がフィアット127として市販された。またX1/20はX1/8の企画を再検討した2リッター級のミッドシップ車で、ランチア・ベータ・モンテカルロとして市販されている。

【TOPICS 02】X1/9に繋がるコンセプトカー

ベルトーネが開発し、1969年のトリノショーで発表されたコンセプトカー、Autobianchi A112 Runabout。それまで同社が作っていたフィアット850スパイダーに代わる軽量スポーツカーの提案で、ミッドに128用エンジンを搭載。ジャンニ・アニエッリ会長が量産化の打診をしたと言われ、これがX1/9開発につながっていく。

【TOPICS 03】ストラトスに繋がるラリーカー

国際ラリーでの成功を目指して少数が作られたプロトタイプ、Fiat Abarth X1/9 Prototipo。エンジンはアバルト124ラリー用の直4DOHC1.8リッターで180~210ps。イタリアやフランス国内ラリーで活躍したが、親会社フィアットの意向でプロジェクトは中止された。そのノウハウはランチア・ストラトスに活かされた。

【TOPICS 04】ダラーラ製Gr.5レーシングカー

グループ5(シルエットフォーミュラ)で活躍することを念頭に、ダラーラが開発したレース用車両、Dallara X1/9。1975年のパリサロンで発表。エンジンは当初1.3リッターDOHC16V/192psで、後に1.6リッター/210ps仕様も登場。オーバーフェンダーや大型ウイングなどを装備したボディが特徴。30台程作られた。

Text:中島秀之  Photo:山本佳吾
Special Thanks:コレツィオーネ http://www.collezione.co.jp/
TIPO 2023年10月号より転載

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