【趣味の中古車ガイド】ロータス・エランが欲しい!!【Purchase Project 08】
中古車として人気の高いモデルの概要、ヒストリー、バリエーション、トラブルシューティング、インプレッションなどを紹介するティーポの人気連載【Purchase Project】から、ロータスを一躍メジャーな存在にしたライトウェイト・スポーツカーの傑作、エランの詳細に迫ります。
LOTUS ELAN S2 & S3
1962年発表ということを考えると、異例にモダンなボディデザインだったエラン。構造もデザインもロン・ヒックマンの卓越したアイデアの賜物。現車はフロントの車高が僅かに低められている。左のS2に比べ、右のS3はドアサッシとトランクエンドなどが違っている。現車はホイールアーチが角張っているが、S4とも形状が異なる。S2に比べ、対候性と快適性が高められていたのがよくわかる。
【SUMMARY】
ロータス・エランは1962年のロンドンモーターショーでデビュー。FRPモノコックの前作エリートとは異なり、X型鋼板バックボーンフレームにFRP製オープンボディを載せる構造を新たに採用。
エンジンは、フォード製鋳鉄ブロックに独自のDOHCヘッドを組み合わせたロータス・ツインカム(当初1.5リッター/100ps)で、ミッションは4速、サスペンションは前ダブルウイッシュボーン、後ストラット、ブレーキには4輪ディスクを装備。翌1963年から実質的な販売を開始し、同年5月には排気量を1.6リッターに拡大(105ps)。更に1964年10月には、インパネやテールランプを変更したシリーズ2(以下S2、他も同様)にマイナーチェンジした。
1965年9月にフィクスドヘッドクーペ(FHC)を追加。トランクリッドの切り欠きが変更され、サッシ付ドアやパワーウインドーなども採用された。翌1966年1月にはドロップヘッドクーペ(DHC)の高性能仕様、SE(115ps)を追加。更に6月には、DHCもFHCと同様のトランク&インパネ形状を持つS3に進化している。
1968年3月に、ホイールアーチ形状、タイヤサイズ、テールランプ形状などを変更したS4が登場。1971年2月には126psのビッグバルブ・ユニットを装備、3色にボディを塗り分けたスプリントが追加された。なお、全く異なるボディを持つエラン+2は、1968年に登場。2座のエランが1973年に生産を終えた後も作られ、1975年に生産を終了した。
【EXTERIOR & ENGINE】 軽量コンパクトでスタイリッシュなボディ
S2(左)まではドアにサッシが付かず、アクリル製のサイドウインドーは、上部のフックを持って手動で上げ下げする。クラシカルで人気が高いが、幌をしても隙間があり、雨天時は水が侵入する。S3(右)はドアにサッシが付き、サイドウインドーはガラスの巻き上げに進化。パワーウインドーも装備された。
純正スチールホイールは、S2(左)までホイールキャップ付4穴タイプ。タイヤは145/80R13を装着する。S3(右)の ホイールはスチールのままながら、センターロック式に変更。キャップではなくスピンナーが備わる。
【INTERIOR & LUGGAGE】 タイトで質素だが居心地の良いインテリア
S2(左)からフルワイズになったインパネ。助手席前に蓋&鍵付きのグローブボックスが設けられた。ステアリングは大径のウッドで、ハンドブレーキはステッキタイプ。S3(右)のインパネはラジオのスペースや灰皿などを追加。下側にパッドが付き、ウッドの材質も豪華になった。
S2(左)まではトランクリッドがリアエンドまで届いておらず、開口部が小さい。内部には全面カーペットが敷かれ豪華な印象。S3(右)からはトランクリッドがボディエンドまで延長され、開口部が大きくなった。LOTUSの文字も装備された。
【IMPRESSION】軽快なハンドリングで常にクルマとの一体感を実感できる!
今回お借りしたのは1965年式のS2 DHC。美しくレストアされた個体で、非常に良いコンディションだった。若干フロントの車高が下げられているそうだが、ほぼオリジナル状態だ。
軽いドアを開けて乗り込むと、着座位置が低く、すっぽりバスタブに浸かっているような感じになる。とはいえシートは見た目以上に快適で、自然に手を伸ばした位置でステアリングやシフトノブを操作できる。ただしこれ、自分のように背が低い場合はいいが、背の高い人はかなりタイトに感じるだろう。
エンジンをかけ走り出す。ロータス・ツインカムは低回転からトルクがあり、非常に扱いやすい。ただ驚くべきは、ボディの軽さの方だ。動き出した途端、フワリと何かに乗ったかのような軽やかさで、車速を高めていく。サスペンションが適度に柔らかくストローク感があるので、乗り心地も極めて快適。普通に加速するだけで、これほど気持ちの良いクルマはないだろう。
ちょっとしたカーブが続く区間になると、気持ち良さに更に拍車がかかる。軽くフロントに荷重をかけてステアリングを切ると、まさにヒラリ! といった感じにノーズが入り、そのまま自分を中心にクルマが向きを変えていく。その際サスペンションはストロークしながら粘っていて、タイヤの接地状態を常に伝えて来てくれる。
とにかく運転が愉しいし、クルマとの一体感を強く感じることができる。できれば一日ワインディングを走り続けたいと、本気で思った取材だった。
【TROUBLE SHOOTING】
- 消耗品を把握しておくことで故障を減らせる
エランは故障が多いクルマではないが、定期的に交換が必要なパーツがあり、それらを把握しておくことが重要だ。例えばドライブシャフトのラバードーナツ、エンジンやデフのマウントなどは、数年に一度は交換と考えた方がいいそうだ。またバックボーンフレームは、既に純正品はないが、スパイダー社でオリジナルと近いものを生産しているので、劣化したらそれに交換するのが得策だ。 - ミッションの内部パーツの入手が現在難しい
エンジンのウォーターポンプは劣化しやすい上に、一度エンジンを降ろさないと交換できないので注意が必要だ。またミッションは、ここ10年程内部のパーツ、ガイドレールやシンクロ、ブッシュなどが入手できなくなっているそうだ。生産が再開される可能性はあるが、暫くは中古部品で修理するしかない。このため。購入時にはミッションのフィーリングを必ず確認しておきたい。
【CAR'S DATA:取材車両詳細】

LOTUS ELAN S2(1965年式)/S3(1967年式)
全長×全幅×全高:3683×1422×1149mm/ホイールベース:2134mm/車両重量:674kg(S2)694kg(S3)/エンジン:直4DOHC8バルブ/総排気量:1558cc/最高出力:105ps/5500rpm/最大トルク:14.9kg-m/4000rpm/サスペンション(F/R):ダブルウイッシュボーン/ストラット/ブレーキ(F&R):ディスク/タイヤ(F&R):145-13(520-13) /取材協力:Witham Cars https://www.witham-cars.com/
【CHRONOLOGY】 ロータス・エラン販売の変遷
1962年10月:ロンドン・モーターショーにて、ロータス・エラン(タイプ26)が発表される。グローブボックスに蓋のないインパネ、丸4灯のテールランプなどが特徴。当初直4DOHC1498cc/100ps&14.1kg-mエンジンを搭載。



ELAN S1 (1600)
1963年5月:エンジン排気量を1558ccに拡大し、出力は105ps&14.9kg-mに向上。
1964年10月:シリーズ2(S2)に進化。ヴォクゾール・ヴィクター用の横長テールランプに変更。グローブボックスに蓋が付いたインパネを採用。センターロックホイールをオプションで用意。
ELAN FHC (TYPE36)
1965年9月:ルーフを持つフィクスドヘッドクーペ(FHC/タイプ36)が追加される。ボディはトランクリッドがリアエンドまで延長され、ドアヒンジを改良。バッテリーがトランク内に移動し、パワーウインドーも装備された。
1966年1月:ドロップヘッドクーペ(DHC/タイプ26)に、115psに出力を上げたエンジンとクロースレシオ・ミッション、ブレーキサーボ、セッティングが変更された足周りなどを持つ、SEが追加設定された。
1966年6月:DHCが、FHCと同様のトランクリッドなどを持つシリーズ3(S3/タイプ45)にマイナーチェンジされた。ドアにサッシを備え、パワーウインドーも装備される。ホイールはセンターロックのみになった。通常仕様(105ps)とSE(115ps)の2種。
1966年7月:FHC(タイプ36)にもSE仕様が設定された。
1967年6月:ホイールベース、トレッド共に拡大し、全く異なるボディを与えられた、豪華仕様のエラン+2(タイプ50)が発売される。直4DOHC1558cc/118ps。



ELAN S4 DHC & FHC
1968年3月:DHC、FHC共にシリーズ4(S4)にマイナーチェンジ。タイヤが145-13から155-13になり、ボディのホイールアーチ形状が角張った形状に変わり、オーバーフェンダー化された。テールランプが+2と同じジャガーEタイプS3のものに変更され、インパネのスイッチがシーソー式に、シート生地がパンチングタイプになった。105psと115ps(SE)。
1968年10月:エラン+2の装備を変更したエラン+2Sを追加発売。フォグランプ、サイドシルカバーなどを備え、内装が豪華になった。118ps。
1968年11月:排出ガス規制に対応したゼニス・ストロンバーグ・キャブレターを+2S以外の全車に装備。
1968年12月:エラン+2(標準仕様)の生産を終了。
1969年8月:ゼニス・ストロンバーグ・キャブレター装備のエンジン生産をやめ、ウェーバーまたはデロルトを再度装着。

1971年2月:バルブ径を拡大、圧縮比を上げ、126ps/15.6kg-mまでチューンした、ビッグ・バルブ・ユニットを搭載した、エラン・スプリントを追加発売。車体下部を白、バンパーなどをゴールドにした3トーン塗装を採用。DHCとFHC。



ELAN +2S 130
1971年2月:エラン+2Sをベースにビッグ・バルブ・ユニット(126ps)を搭載した、エラン+2S 130を追加発売。ルーフがシルバー塗装となった。
1972年10月:エラン+2S 130に5速MTがオプションで用意され、エラン+2S 130/5と呼ばれた。
1973年8月:2シーターモデルの生産を終了。
1975年:エラン+2系の生産を終了。
【TOPICS】レース用の26Rは似て非なるクルマ
エランのレース用ホモロゲ・モデルである26Rは、S1ベースのフェイズ1が45台、S2ベースのフェイズ2が52台生産されたと言われる。この内フェイズ2は、補強されたフレームにBRMチューンの165psエンジンを搭載し、足まわりなどを強化。肉薄FRPボディは前後フェンダーにフレアが付き、ヘッドライトは固定式だった。ロードカーとは完全に別物で、ロータス・ファナティックにとっては憧れの存在と言える。
LOTUS 26R:写真は新車で輸入された4台の26Rの内の1台。高野ルイ氏がレースで使用したフェイズ2で、オリジナル度が高い。
Text:中島秀之 Photo:奥村純一/内藤敬仁(S1)/阿部昌也(S4 DHC)/宮越孝政(S4 FHC)/タナカヒデヒロ(+2S 130)/吉見幸夫(26R)
Special Thanks:Witham Cars https://www.witham-cars.com/
TIPO 2020年5月号より転載