【趣味の中古車ガイド】フォルクスワーゲン・ビートルが欲しい!!【Purchase Project 09】

中古車として人気の高いモデルの概要、ヒストリー、バリエーション、トラブルシューティング、インプレッションなどを紹介するティーポの人気連載【Purchase Project】から、クルマ好きにとっての永遠のアイドル、VW空冷ビートルの詳細に迫ります。

【趣味の中古車ガイド】フォルクスワーゲン・ビートルが欲しい!!【Purchase Project 09】
ウインドウの大きさ、フェンダーやライト、バンパーの形状など、時代ごとに細部は異なれど、基本的なデザインは最後まで不変。どこから見てもビートルとわかる。取材車両はメキシコ製ビートルの最終生産車アルティマエディション、2003年式。ボディカラーはアクエリアスブルー。

【SUMMARY】
フォルクスワーゲン(VW)・ビートルは、ナチス政権下のドイツで、フェルディナント・ポルシェ博士により開発された。生産開始は1939年。この年第二次世界大戦が始まり、国民車KdFワーゲンは軍用車に姿を変え、その後敗戦を迎えたのだった。
KdFワーゲンの工場を接収したイギリス軍はその性能を高く評価し、フォルクスワーゲンと名称を変えて生産を再開。程なく会社として独立し、国内販売に加えて輸出も開始された。
このVWタイプ1は、本来の目的であった国民車として大人気となり、更に貴重な外貨を稼ぐ輸出品としても重要な役割を担っていく。また毎年のように細かな仕様変更を行いながら、カブリオレやカルマン・ギア、タイプ2といったバリエーションを増やしつつ、大量生産が続けられていった。
世界中の国々に輸出されただけでなく、オーストラリア、ブラジル、メキシコ、南アフリカなどに工場が作られて生産を拡大。その人気は1960年代にピークを迎えることになる。
だが1970年代を迎えると様々な新しいライバルの前に苦戦。足まわりやボディ形状を変更したモデルを追加したが人気は回復せず、1978年をもって本国での生産を終了した。
その後もブラジル、メキシコでは生産が続けられ、各国に輸出も行われた。ブラジルでの生産は1996年、メキシコでの生産は2003年7月に終了。戦前からの総生産台数は実に2152万台以上に及び、これは同じ設計の車種としては世界最多である。

【EXTERIOR & ENGINE】唯一無二の癒し系ボディと独特の空冷エンジン

フロントは、1967年以来のカバーを持たない丸2 灯ヘッドライト(スモール兼用)と、バンパー部のウインカーのみ。6V時代のフェンダーやライトへの交換も可能。
テールライトは上からウインカー、リフレクター、スモール&ブレーキ、バックの順。ハイマウントブレーキランプは備わらない。これも古いタイプに交換可能だ。
昔のビートルを再現した、ノーズに装着されるウォルフスブルグの紋章。
キャップ付スチールホイールに165R15のタイヤを装備する。
1.6リッター空冷水平対向4気筒エンジンは、ノーマルで46psを発揮。インジェクション、大型オルタネータ、クーラーなどでエンジンルーム内は密状態。

【INTERIOR & LUGGAGE】クラシカルな趣を残した内装は実用性も十分

ドイツ製時代に比べてパッドが大幅に増加したインパネ。ただしアルティマ・エディションはボディ色に塗られる。ステアリングは他の水冷車用を流用。
メーターはこれのみで、速度計、燃料計、オドメーター、警告灯が配置される。
シフトレバーはEMPI製クイックシフターを装着し、操作しやすくしている。
アルティマ・エディションでは標準装備されていたクーラーの吹き出し口。
硬めで、自然に背筋を伸ばした姿勢になるフロントシート。足をペダルに合わせると、ステアリングがやや近い。
ベンチタイプの後席は、足元、頭上ともやや狭く、子供用スペースといった印象。左右に3 点式ベルトを備える。
フロントのトランクスペースは、下に燃料タンクがあるため深さがない。

【IMPRESSION】力のあるエンジンと快適な足まわりで日常的に使えるヒストリックカー

今回お借りしたのは、メキシコ製ビートルの最終限定車アルティマ・エディション(3000台限定)。内外装をクラシカルに仕立て、ボンネットのオーナメントやホワイトウォールタイヤも装着される。
現車は低走行のノーマルで、内外装とも非常に良い状態。乗り込むとまず、ドアの締まり方が昔のドイツ車そのもので、思わず頬が緩む。シートは硬めで、ピンと背筋を伸ばして近めのステアリングを握ることになる。
バサバサという空冷サウンドを聞きながらスタートさせる。排気量が1.6リッターと大きいエンジンはトルクフルで、なんのストレスもなく車速を上げていく。ノンパワーのステアリングは動き出してしまえば軽く、据え切り以外で不便は感じない。ただしミッションはギア比が離れているようで、やや車速が緩慢になる場面もあった。
驚いたのは乗り心地が良いことで、きちんとストロークしながらショックを巧みに吸収してくれる。それでいてカーブではフワフワした感じがなく、安心してアクセルを開けていける。またフロントがディスクになったブレーキも、古い年式に比べると格段によく効いていた。
なお取材日は暑かったため走行中はクーラーを終始つけていたが、十分に冷えて快適だった。
メキシコ製ビートルの中でも特に人気が高く、ノーマルで乗る人が多いというこのアルティマ・エディション。クラシカルな良さを気軽に楽しめるということで、空冷VW初心者はもちろん、様々な車種を乗り継いだベテランにもお勧めしたい一台だ。

【TROUBLE SHOOTING】

  1. オイル交換とグリスアップはこまめに
    空冷エンジンのビートルは、オイル交換が性能維持の鍵と言える。最低でも年に2回、夏冬で番手を変えた鉱物油で交換を行って欲しい。
    またメキシコ製ビートルは油圧タペットのため、オイル交換をまめに行わないと、異音が出ることがあるそう。
    なおメキシコ製最終モデルでも、足まわりなどにグリースアップが必要なので注意したい。更にファンベルトも早めの交換を心掛けたい。
  2. メキシコ製はECUや触媒に注意を
    基本的にパーツは豊富に揃うので、特に古い年式のものは、フロアやボディの傷みが少ないものを選びたい。
    一方メキシコ製最終型は、インジェクションのECU が壊れやすいが、部品がなく修理も難しいため、キャブレターに交換する場合もあるという。また触媒も部品の入手が難しくなっているという。
    どんな年式であれ、購入や整備は、空冷VW 専門ショップを頼った方がいいだろう。

【CAR'S DATA:取材車両詳細】

VOLKSWAGEN TYPE-1 MEXICO UL TIMA EDITION(2003年式)
全長×全幅×全高:4060×1550×1505mm、ホイールベース:2400mm、エンジン:空冷水平対向4気筒OHV、総排気量:1585cc、最高出力:46ps/4000r.p.m.、最大トルク:10.0kg-m/2200r.p.m.、トランスミッション:4速M/T、サスペンション(F/R):トレーリングアーム/スイングアーム、ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム、タイヤ(F&R):165R15、取材協力:FLAT4 https://www.flat4.co.jp/

【CLASSIC MODEL】1960年代生産のモデルはメキシコ製とは細部が異なる

取材時にもう一台見せていただいた中古車は、1965年式の北米輸出仕様。西海岸に似合いそうなブルーのボディは艶も十分で、非常に良いコンディションだった。メキシコ製の高年式のモデルとは、似ているようだが、細部が異なっており、それが魅力となっている。

小さなテールライト、純正スチールホイール、左右2本出しマフラーなども魅力的だ。
カバー付ヘッドライト、フェンダー上のウインカー、ダブルバンパーなどがクラシカル。
1.2 リッターエンジンはソレックス・シングルキャブで34ps。電装系は12Vに換装してある。
ステアリングはFLAT4 製VW 純正スタイルに交換。ラジオはBLAUPUNKT 製だ。
シートとドア内張は、新品のビニールレザー製カバーで張替え済。とても清潔な印象。
クーラーがないため、後席後ろのスペースは、かなり広い荷物置きとして活用できる。

【CAR'S DATA:取材車両詳細】
VOLKSWAGEN TYPE-1 SEDAN(1965年式)
全長×全幅×全高:4070×1540×1500mm、ホイールベース:2400mm、エンジン:空冷水平対向4気筒OHV、総排気量:1192cc、最高出力:34ps/3600r.p.m.、最大トルク:8.4kg-m/2000r.p.m.、トランスミッション:4速M/T、サスペンション(F/R):トレーリングアーム/スイングアーム、ブレーキ(F&R):ドラム、タイヤ(F&R):5.60-15、取材協力:FLAT4 https://www.flat4.co.jp/

【CHRONOLOGY】VWビートル(タイプ1) 本国生産車 販売の変遷

1938年8月:ナチスドイツの意向により、フェルディナント・ポルシェ博士が「国民車」KdFワーゲンを開発。これを入手するための積立貯金制度が開始され、受注がスタート。1940年から一般市民に納車されるとの触れ込みだった。空冷水平対向4気筒1131cc/25psエンジン。

1945年5月:ドイツ無条件降伏。KdFワーゲンの生産はごく少数に終わり、大量生産されたのは、これを元にした軍用車だった。

1945年7月:イギリス軍が工場を管理下に置き、残っていた設備で生産を再開。フォルクスワーゲンと改名し、主に占領軍の現地用車両として供給された。
1945年12月:一般ユーザー向けの車両の量産および市販を開始。
1947年:オランダへの輸出を開始。以後次第に輸出先を増やしていく。
1949年:メッキモールなどを持つデラックス/エクスポートを追加。翌年からキャンバストップがオプション設定された。

1949年3月:ヘブミューラー社が架装した2シーター・カブリオレがジュネーブで発表される。工場火災などがあり総生産台数は696台で終わった。

1949年8月:カルマン社が架装した4シーター・カブリオレの生産を開始。カルマン社によるカブリオレは1980年1月までに33万1847台生産された。
1952年10月:内外装に変更。ダッシュパネルのデザイン変更、三角窓の採用など。

1952年10月:VWのハインリッヒ・ノルトホフ社長が4台のVWを携えて来日しプロモーションを実施。
1952年12月:梁瀬自動車と不二商事(三菱系)が共同し、暫定的な販売会社として日独自動車を設立。
1953年1月:梁瀬自動車が日本初のVWの展示会を開催し、販売を開始。ヤナセの販売ラインナップは基本的に本国準拠なので、以後本国発表と同様に表記。

1953年3月:リアウインドウが通称スプリットからオーバルになり、後方視界を改良。
1953年12月:エンジン改良。1191cc/36psに。通称「スタンドエンジン」。

1955年8月:戦後100万台目のVWビートルがラインオフした。

1957年8月:1958年式が登場。リアウインドウがさらに拡大。通称「スクエアウインドウ」になった。
1960年8月:1961年式が登場。エンジン圧縮比を高めて1192cc/40psとなり、「VW1200」を名乗る。

1965年8月:1966年式が登場。エンジンに1285 cc/50 ps仕様が追加。VW1300として販売。

1966年8月:1967年式が登場。電装系が6Vから12 Vに。ヘッドライトは斜めから直立になった。エンジンに1493 cc/53 ps仕様を追加。VW1500として販売。
1969年8月:1970 年式が登場。北米向けに1584 cc/57 psエンジンを追加。

1970年8月:1971年式が登場。フロントサスをストラットとし荷室を拡大した、1302シリーズ登場。日本では1300ccのVW1302と、1600ccの1302S。1302Sにはほかにサンルーフ、3速自動クラッチM/Tのオートマチック、コンバーチブル、コンバーチブルオートマチックがあった。

1972年8月:1973年式が登場。1302がフロントウインドウを曲面にした1303シリーズに進化。ダッシュ周りのデザインも一新された。
1974年8月:1975年式が登場。日本向けと北米向けの1600ccエンジンにボッシュ製Lジェトロニック・インジェクションを採用。
1976年:1303シリーズ生産終了。1303カブリオレは生産継続。
1978年1月:ドイツ国内でのタイプ1セダンが生産終了。
1978年:ヤナセで最終限定仕様「グローリー・ビートル」を発売。ブラックとホワイト各250台、500台の限定で、赤いチェッカー柄の専用シートとサンルーフ、ラジオが標準装備される豪華仕様。発売してすぐ、車両が日本に上陸する前に売り切れた。

1980年1月:カルマン社工場にてカブリオレ(1303)が生産終了。

【CHRONOLOGY】VWビートル(タイプ1) ブラジル生産車 販売の変遷

1953年:VW・ド・ブラジル設立。ビートル(現地名フスカ)の現地組み立てを開始。
1957年:工場を移転し拡大。
1959年:フル現地生産を開始。その後各部をモダナイズしながら生産を継続。ただしボディは、1964年までのサイドウインドウの狭いタイプを使用。
1976年:フロントディスクブレーキを採用。
1982年:四角いパッドと速度計を持つインパネを採用。
1985年:FLAT4が、1.6リッター・エンジンを搭載し、外観をクラシカルにモディファイしたフスカを日本で発売。

1986年:フスカの生産終了。休止期間を経て、1993年〜1996年にフスカの再生産が行われる。

【CHRONOLOGY】VWビートル(タイプ1) メキシコ生産車 販売の変遷

1954年:メキシコでのビートルの現地組み立てを開始。

1966年:プエブラ工場を新設。フル現地生産を開始。本国の1964年までの仕様を踏襲。
1968年:1.5リッターエンジンを搭載し、大型バンパー、一体型ヘッドライト、大型テールライトなどを採用。
1971年:サスペンションのキングピンがボールジョイントとなり、パッド付ダッシュボードを採用、その他ほとんどの部分が本国のモデルに近い仕様にアップデートされた。サイドウインドウも拡大。1.6リッターエンジンがオプション設定された。
1978年:本国での生産が終了したことに伴い、メキシコ製ビートルの西ドイツへの輸出が開始。

1987年:エンジンリッドのルーバーを廃止。1.6リッター+シングルキャブレター・エンジンが標準になる。
1992年:触媒、電子制御燃料噴射装置などが装備される。エンジンリッドのルーバーが復活。大型バンパーなどを採用。ゴルフⅢ風のステアリングやシートを装備。
1997年:ステアリングが、2本スポークに変更された。
1998年:Cピラーのベンチレーションスリットが廃止され、フロントディスクブレーキとイモビライザーが標準となる。
1990年代:FLAT4、BUBU、オートトレーディング、マルカツなどが日本に並行輸入して販売を実施。

1987年:エンジンリッドのルーバーを廃止。1.6リッター+シングルキャブレター・エンジンが標準になる。

2003年:最終ロット3000台を、専用ボディ色、専用内装生地、メッキパーツやフロントのエンブレム、クローム・ホイールキャップ&ホワイトウォールタイヤなどでクラシカルに仕立てた、アルティマ・エディションとして生産。同年7月に生産を終了。

【TOPICS】中南米製新車を独自に仕立てて販売

日本の空冷VW文化を牽引し続けているFLAT4 は、ビートルの生産が本国で終了した後、ブラジル製やメキシコ製の新車を独自に輸入してきた。サイドウインドウが小さいブラジル製は、1985 年に1 .6リッター・エンジンで輸入され、FLAT4 でフェンダーやバンパーをクラシカルに仕立てて販売された。一方メキシコ製は1988 年頃から輸入が開始され、1990 年代半ばには車高を落としたキャルルック・スタイルの仕様も用意されていた。

Text:中島秀之  Photo:山本佳吾、竹内耕太(写真提供/協力)
Special Thanks:FLAT4  https://www.flat4.co.jp/
TIPO 2020年10月号より転載

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