軽自動車で富士スピードウェイを走る。そんなシンプルで痛快な楽しさを味わえるのが、毎年2月と8月に開催される耐久レース「K4GP」だ。
その魅力は、何といっても間口の広さにある。身近な軽自動車で参加でき、耐久レースゆえにドライバーだけでなく、メカニックやスタッフなど仲間と一緒に楽しめる。だからこそ毎回多くのエントリーを集め、パドックには独特の賑わいが生まれる。
もちろん、ただ速く走ればいいわけではない。クラスごとに使用できる燃料量が定められているため、速さと燃費を両立させる戦略が勝敗を左右する。そしてもうひとつ面白いのが、参戦車両の自由さだ。市販の軽自動車をベースとしたマシンが多くを占める一方で、中にはプロトタイプカーを思わせる個性的なマシンも存在する。
速さだけでは勝てない。仲間と知恵を絞り、限られた燃料を使って富士を走り切る。そんな奥深さもまた、K4GPが多くの参加者を惹きつける理由なのだ。









往年のレーシングカーをモチーフにしたものから、まったくのオリジナルデザインで仕上げたものまで、参戦車両は実にバラエティ豊か。個性あふれるマシンを眺めているだけでも楽しい。
ありがたいことに、私はこれまでいろいろなチームと縁があり、長年に渡ってこのレースに参加させてもらっている。昨年から「IMAGE R50 TIPO」チームから参戦し、初めて総合優勝をすることができた。たかだか軽自動車のレースとお思いだろうが、100台以上のエントリーがあればそう簡単に勝たせてはもらえない。IMAGE R50 TIPOチームも長年に渡ってエントリーしているが、昨年初めて総合優勝出来たと聞く。なかなか勝てないところも、このレースの面白いところかもしれない。
さて、私が乗ったクルマを説明しよう。シャシーは90年代に行われていた、ザウルスジュニアというカテゴリーのレース車両を流用している。アルミ製のバスタブシャシーは、ミッドにエンジンを搭載し、サスペンションは前後共にダブルウィッシュボーンを採用。レーシングカーとして設計されたマシンなので、まさに適した素材といえる。実際にK4GPのプロトタイプの多くは、このザウルスジュニアをベースとしている。そのシャシーにポルシェ936をイメージした、オリジナルのボディを被せる。エンジンはアクティなどに搭載されていた、ホンダ製の自然吸気3気筒を採用する。これに独自のチューニングを施し、カタログスペックより1.5倍以上のパワーを絞り出すというから驚きだ。このレースはエコランも求められるので、パワーを追求すれば良いという訳ではなく、燃費とのバランスもまた重要となる。
チームは昨年に引き続き、今年も5時間と10時間耐久レースのどちらもエントリー。一台のクルマで2日間にそんなに走らせて大丈夫なのだろうか、と思っていたけれど、昨年も難なくこなしていたので耐久性については問題なし。今夏は天候不順とあって、いつ雨が降るか分からない状況もあり、コンディションが悪くなった場合のリザーブドライバーとして待機していた。幸いにも一時雨こそ降ったものの、それほどコンディションは悪化することなく、レギュラードライバーの頑張りによって見事優勝。燃費のデータも取れたし、幸先の良いスタートとなった。

翌日の10時間耐久レースは、5人のドライバーでエントリー。チーム監督兼ドライバーの伊藤さんはリザーブドライバーとして待機し、基本的にはチームの運営がメイン。よって実質4名のドライバーでバトンを繋ぐ。私を除く3名はこのチームでの経歴も長く、勝手知ったる面々だ。私より先輩ばかりの、平均年齢50代後半の経験豊富なメンバーとあって頼もしい。
そして、10時間耐久の周回数は、ここ数年平均して200周程度。我々のクラス(GP-4)が使える総燃料量は80リッターなので、リッター11.4km以上走らないとゴールまで辿り着けない計算だ。よってエンジン回転数を抑え、空走距離も長く取るなど、燃費走法に徹する必要がある。といっても、レース状況に合わせて細かく調整する必要があり、ドライバーはピットと無線で話ながら走り方を決めていく。
【後編に続く】



ザウルスジュニアをベースにK4GP用に改良されたマシン。エンジンはホンダ製で、燃費を考慮して過給器は装着していない。燃費を重視してエコタイヤを履くチームもあるが、我々のチームはシバタイヤを履く。K4GPの黎明期から参加を続けている代表の伊藤さん。
Photo:佐藤亮太