ポルシェ=911、あるいはRR。そもそもポルシェ市販車の歴史がフォルクスワーゲン タイプ1のコンポーネンツを活用しつつ、いわば“スーパービートル”とでも言うべき356でスタートしているのだから、それはDNAの継承という見方からすればもっともな話である。


photo:Porsche newsroom
しかし、その356シリーズが当初はRRではなく、ミッドシップスポーツカーとして開発が始まったというのも有名な話で、ポルシェ関連の書物を紐解けば、その序章にポルシェNo.1、または356/1と呼ばれる、市販型の356スピードスターにもよく似た試作車の写真を目にすることが出来るはずだ。356/1は鋼管スペースフレームシャシーに総アルミ製ボディを架装し、チューニングしたタイプ1用の1.1リッターエンジンを車体中央に搭載していた。理由は意外や判然としないが、おそらくはコスト面から356の量産にあたってはタイプ1に準じたRRへと変更されている。

そんな歴史もありつつ、並み居るライバル車たちの存在を意識してのことだろうか、ポルシェは914シリーズに始まり、種々のミッドシップスポーツカーを世に送り込んできた。しかし、ボクスターしかり、あくまでミッドシップスポーツカーは911の下位にマウントされ、「ポルシェといえば911」という構図をポルシェ自らが守り続けてきたようなフシもあった。

それを覆す役目を期待されて2003年のジュネーブショーで発表されたのがカレラGTである。公道を走るレーシングカーとも言われ、カーボン製センターモノコックにカーボン製リアサブフレームを結合したミッドシップ構造を採用し、ボディ外皮もカーボン製とすることで車重は1.4トン以下と、このクラスとしては超軽量。エンジンは過給機に頼らずに612馬力を発生する5.7リッターV10が搭載され、圧倒的なパフォーマンスを誇った。プッシュロッド式フロントサスペンションなどもまさにレーシングカー譲りの装備と言えた。
しかしながらレギュレーションの変更によってレースへの転用が出来なくなったことや、扱いづらいといったネガティブな評価が先に広まったこともあって、生産台数は予定枠の1,500台を大幅に下回る1,300台弱にとどまっている。さらに昨今では、映画『ワイルド・スピード』の主役を演じたポール・ウォーカー氏が同車の助手席搭乗時に事故にあって死亡したことなども、カレラGTのイメージを下げてしまったことは否めない。しかし、現在はカレラGTの再評価が進み、新車時の数倍とも言われるプライスで取引されている。

そんなカレラGTの事実上の後継機種として2010年のジュネーブショーで発表されたのが918スパイダーだ。CFRP製モノコックとサブフレーム締結によるカレラGTの車体構造を踏襲しながら、パワートレインを大幅に近代化。RSスパイダー由来の4.6リッターV8と3基のモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用している。最高速度は320km/h、ニュルブルクリンク北コース7分以下のラップタイムと、スーパーカー離れした約33km/リッターという優れた燃費性能を両立で話題を呼んだ。こちらは生産台数は当初から大幅に絞って、車名通りの918台としたことから、即日完売となったようで、多くの個体が世界中のセレブ宅のガレージに潜んでいると思われるが、カレラGT以上に、日本の路上で目する機会は少ない、というか皆無だ。

ここに紹介するのは、そんな“フラッグシップ・ミッドシップ・ポルシェ”2台をセットにしたという、何とも豪華なフォーマットで販売されるモデル。ミュージアムでもこの2台が同時に並ぶ様を目にすることはほとんどないだけに、ポルシェファンにとっては堪らない光景がいつでも楽しめるのは至福。918の方は、ポルシェ・モータースポーツのアイコン、マルティニカラーをまとったヴァイザッハパッケージ(約36kgの軽量化が施されたオプション仕様)車を再現。2台ともに、日本に実在する個体を3Dスキャンして、そこで採集したデータを元に原型を設計しているので、プロポーションの良し悪しを語るのはナンセンスと思えるほど“いい形”をしている。
車体はレジン製で、ホイールは真鍮で切削した原型をホワイトメタル製鋳造部品に置き換えたもの、エンジンのメッシュタイプのカバーはステンレス製のエッチングパーツをプレス加工した部品を奢るなど、様々なマテリアルを適材適所に配置している。仕上げのクオリティも一級品で、一台一台職人が手作業で鏡面状態にまで仕上げた塗装など、見どころ満載だ。
■メイクアップ Porsche 918 Spyder Weissach package & Carrera GT set商品ページ https://www.makeupcoltd.co.jp/products/detail/1890