【趣味の中古車ガイド】トライアンフTR4/TR4Aが欲しい!!【Purchase Project 19】
中古車として人気の高いモデルの概要、ヒストリー、バリエーション、トラブルシューティング、インプレッションなどを紹介するティーポの人気連載【Purchase Project】から、トライアンフTRシリーズの完成形にして、最も高い人気を誇るトライアンフTR4/TR4Aの詳細に迫ります。

【SUMMARY】
トライアンフが1952年秋に発表したTR(トライアンフ・ロードスター)は、北米のスポーツカー人気を狙ったプロトタイプだった。
その後大幅に改良されたモデルが、TR2として1953年に販売を開始。シャシーは同社の既存モデル用を改良したラダーフレームで、サスペンションは前ダブルウィッシュボーン、後リーフリジッド、エンジンは直4OHV1991㏄/90psだった。
1955年秋に小変更されてTR3に進化。その後も改良されながら、1957年秋にはフロントグリルが大型化したTR3Aへと進化した。
1961年秋に、TR3Aをベースに、ミケロッティ製の美しいボディを持ったTR4が登場。TR3Aでオプションだった2138㏄/100psエンジンが標準となり、1991㏄はオプションとなる。4速ギアボックスはフルシンクロ化され、ステアリングはラック&ピニオンに改められた。
1965年1月に、フレームを改良し、リアサスペンションをセミトレーリングアームとしたTR4A(IRS)が誕生。2138㏄エンジンは104psになり、グリル形状を変更、ボディにメッキモールが追加装着された。
1967年に、機械式インジェクション付直6OHV2498ccエンジンを搭載したTR5(北米向けはキャブレター仕様のTR250)が発売される。
その後1969年に、カルマン社によるボディ改良などが行われたTR6が登場。1975年にクーペのTR7が登場し、さらにV8のTR8も登場し、1981年にトライアンフTRシリーズは終焉を迎えた。
【EXTERIOR & ENGINE】 イタリア風味なのに正統派ブリティッシュ

左_ボンネット前端に世界地図をデザインした丸いエンブレムと、TRIUMPHの文字エンブレムがある。右_トランクに付く車名エンブレムは、TR4にAの文字を後付けした印象。その下にIRS(後輪独立懸架)の文字も装着される。
【INTERIOR & LUGGAGE】当時としてはかなり豪華だったインテリア
トランクは、この時代の2座オープンカーとしては、かなり広いスペースを持つ。床もフラットで使いやすい。またスペアタイヤは床下に収納される。バルクヘッド部に燃料タンクがある。
【IMPRESSION】古典的な操縦性だがIRSが有効に作用
今回お借りしたのは、1965年式T R 4 A の左ハンドル仕様。2138 cc のエンジンはストロンバーグではなくSU ツインキャブが装着されており、ラジエターの配置など細かな部分がモディファイされていた。ただしそれ以外はほぼオリジナルで、車体に貼られたストライプ類もカッティングシートのため、簡単に剥がすことができるとのこと。
乗り込むと、スピットファイアに比べれば着座位置が高く、シートの厚みもあって居心地が良い。エンジンをかけると、二本出しのエキゾーストからやや大きめのサウンドが聞こえる。フルシンクロのギアを1 速に入れ走り出す。排気量が大きいためエンジンはトルクフルで扱いやすい。各ギアは比較的クロスしているようで、車速の伸びはいいのだが、シフトの、特に横方向のストロークが大きく、スポーティさをスポイルしている。慣れが必要なフライ式サイドブレーキと相まって、この辺りは古さを感じる。
そもそもラダーフレームも直4 OHV エンジンも、戦前から終戦直後の車両のものに改良を加えて使用しているため、運転感覚そのものはかなり古典的というか、ハードに感じられる。例えば1962 年に登場したライバル(後に同門となるが)のMGBはモノコックボディで、乗り心地や操縦性の面で進化している。
ただし現車は、リアサスペンションをセミトレーリングアームに変更したTR4 A だったため、トラクションのかかりや不整地での後輪の挙動はリーフリジッドより明らかに良くなっていた。
【TROUBLE SHOOTING】
#01 信頼できるショップを見つけるのが重要
大前提として、TR4/TR4Aは60年以上前に生産された車両であり、例えフルレストアされていたとしても、トラブルと全く無縁ではないことを覚悟する必要がある。とはいえ、こうした車両の経験が豊富なショップでメンテナンスが行えれば、クラシックカー初心者でも色々と教えてもらいながら維持していくことは可能だろう。まずはこうした信頼できるショップを見つけるのが先決だ。
#02 変えられる消耗品は交換しておきたい
ショップから購入する場合は、どこまで手が加えられているか確認できるだろうが、交換時期が不明の消耗品は換えておいて損はない。油脂類やブッシュ類に限らず、クラッチやブレーキのマスターカップやホイールシリンダー、場合によってはキャリパーもチェックしておきたい。またハーネス類も、さすがに新車時のままということは少ないだろうが、信頼できるものかを確認したい。
#03 購入する際はボディの状態を優先すべき
TR4/TR4A は基本的には丈夫なクルマだという。ラダーシャシーにオーソドックスなパワートレインを持つため、大きく壊れる要素が少ないからだ。もちろん経年劣化により、駆動系を始め各部が傷んでいる可能性はあるが、幸いパーツは豊富に揃うため、修理は可能とのこと。このため購入する際には、まずボディの状態を優先する必要がある。塗装の下に錆がないかをチェックしたい。
#04 オプションのオーバードライブには注意
オプションで装着されていた電磁式オーバードライブは、作動しないものも多い。修理する場合は、原因がどこにあるかで費用が異なってくるので、お店と相談して欲しい。またTR5の直6 エンジンに装着されたルーカス製機械式インジェクションは、トラブルを起こしやすく、キャブレターに変更されている個体も少なくない。走れることが重要なので、あまり気にしなくて良いのでは?



1965年式 トライアンフTR4A
全長×全幅×全高:3960×1460×1270mm/ホイールベース:2240mm/車両重量:1016kg/エンジン:水冷直列4気筒OHV/総排気量:2138cc/最高出力:104ps/4700r.p.m./最大トルク:18.2kg-m/3000r.p.m./ミッション:4速M/T/サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/セミトレーリングアーム/ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム/タイヤ(F&R):165×15/取材協力:ACマインズ https://ac-minds.com/
【CHRONOLOGY】トライアンフTRシリーズ 販売の変遷
1952年10月:アールズコートショーにプロトタイプ、トライアンフTR(後にTR1)を出展。テールが丸く短いのが特徴で、スペアタイヤは外に装着されていた。エンジンは直4OHV1991cc/75ps。1台のみの試作に終わる。

1953年3月:ジュネーブショーに量産型プロトタイプが、TR2の名で出展される。シャシーは改善され、エンジンは90psまで出力をアップ。ボディはリアを延長してスペアタイヤは収納された。
1953年8月:TR2の本格的な生産と販売を開始。ミッションは1速ノンシンクロの4速で、レイコック・ド・ノーマンヴィル製のオーバードライブ(4速のみ有効)がオプションで用意された。
1954年10月:リアホイールを4.5Jに拡大、リアブレーキ径も拡大された。

1955年10月:アールズコートショーでTR3を発表。ラジエターグリルが前方に移動し、シャシー&ボディには補強が入った。エンジンは95psまでパワーアップし、オプションのオーバードライブは2~4速に有効となる。
1956年10月:エンジンが100psまでパワーアップ。フロントブレーキがガーリング製ディスクとなった。

1957年9月:ヘッドライトの位置が奥まり、フロントグリルが横に大きく上下幅の狭いものに変更となり、車名がTR3Aと改められた。左右ドアにアウターハンドルが新設された。当初北米専用で、1958年1月からイギリスでも販売された。
1959年:2138ccに排気量を拡大したエンジンがオプションで用意された。

ミケロッティデザインのボディを持つTR4。TR4Aとはサイドモールの有無やグリルのデザインが異なる。左がTR4(写真協力:崎山裕之氏)で、右がTR4サリートップ(写真協力:Bless)。
1961年9月:ミケロッティがデザインした近代的なボディを持つTR4にモデルチェンジ。シャシーやエンジンはTR3Aを基本的に踏襲。エンジンは2138ccが標準となり、1991ccがオプションとなった。ギアボックスはフルシンクロ化され、1速のギア比を変更。ステアリングはカム&レバーからラック&ピニオンに変更された。オプションとして、シート後方のオケイジョナルシート、サリートップ(タルガルーフ)などが用意された。
1962年3月:北米向けに、TR3Aに2138ccまたは1991ccエンジンとフルシンクロギアボックスを装備したTR3Bが生産された(同年10月に生産終了)。
1965年1月:ラダーフレームに補強を入れて改良し、トライアンフ2000のセミトレーリングアーム・サスペンションをリアに移植したTR4Aを発売。50kg増えた車重に対応するため、2138ccエンジンは104psにパワーアップ。1991ccエンジンはラインナップ落ちした。キャブレターはTR4後期からゼニス・ストロンバーグ2基(それまではSU2基)に変更された。なお北米向けに、リジッドアクスル仕様も残された。外観では、グリルが横桟基調となり、スモールランプがフェンダーに移り、メッキモールが追加された。


1967年に2.5リッター直6 OHVを搭載したTR5が登場。本国用はインジェクション付150ps(右)、北米用のTR250はキャブレター付104ps(左)。

1969年1月:カルマン社によりリデザインされたフロント周辺と、横長のテールライトなどを持つTR6を発売。北米向けキャブ仕様と、その他向けインジェクション仕様(PI)があった。フロントサスペンションにスタビライザーが追加され、ホイールが5.5インチとなった。
1972年:キャブ仕様は106ps、インジェクション仕様は124psに変更された。

1975 年にモノコックボディのクーペ、TR7 が誕生。後にコンバーチブル(右/写真協力:崎山裕之氏)やV8エンジンのTR8も登場した。
1975年1月:1998cc直4OHCエンジンを搭載する全く新しいクローズドクーペ、TR7が登場。TR6も1976年まで併売された。1979年にコンバーチブルを追加。ローバーV8搭載のTR8も追加されたが、1981年に生産を終了した。
* 日本での正規輸入販売は1970年前後まで、ユナイテッド・ジャパン・モータース、新進自動車、ノースジャパンモータース、サンヨー自動車(~1965年、1966年阿部モータースに改称)、セールチェルニーなどが行っていたが、1970年代以降は阿部モータースと新東洋モータースが担当した。
【TOPICS 】幻のTR、その1。トライアンフ・イタリア。


同じ時期のミケロッティ・デザインのため、TR4と似た印象はあるものの、よりエレガントなクーペボディを採用している。
ナポリでトライアンフの代理店をしていたサルバトーレ・ルフィーノの依頼で製作された、トライアンフ・イタリア2000。TR3 のシャシー&パワートレインを流用し、ミケロッティがデザインした美しいクーペボディと、豪華な内装に変更されていた。1958 年のトリノショーにヴィニヤーレ製のプロトタイプが出展され、好評だったため、1959~62年に329台が作られたと言われる。マセラティ風の内外装を持つ、幻のTRシリーズだ。
【TOPICS 】幻のTR、その2。トライアンフ DOVE(ダヴ) GTR4。
日本に古くからあるDOVE GTR4。オケージョナルシートが備わる2+2で、実用性が高められていた。(写真協力:崎山裕之氏)
ロンドンのディーラー、L.F.ダヴが企画し、コーチビルダーのハリントン・モーター・ボディワークスが製作したクローズドクーペが、DOVE GTR4とDOVE GTR4A。全部で43台が生産されたと言われる。
Text:中島秀之 Photo:奥村純一
Special Thanks:ACマインズ https://ac-minds.com/
TIPO 2021年2月号より転載